5/28/2026

Field Note#7: Audible Story House

今回のField Noteでは、Boweryで開催されていた「Audible Story House」に行ってきました!



“本のない本屋”というコンセプトで構成されたこの空間は、従来の書店のように本が並ぶのではなく、「音」を通してストーリーと出会うための場所としてデザインされていました。



入ってまず印象的だったのは、落ち着きのある空間でした。


心地よいソファや植物が効果的に配置されており、視覚的にもリラックスできる空間がつくられていて、単なる展示空間というよりも、長く滞在できるラウンジのような印象を受けました。




その中で、体験の中心となっていたのが“音”へのアクセス方法でした。


本の代わりに並んでいるのは、表紙ビジュアルが透明なブロックに貼られたオブジェで、それを専用の機械の上に置くと音声コンテンツが再生される仕組みになっています。


非常にシンプルな仕組みでありながら、テクノロジーが自然に体験の中に溶け込んでいて、「操作している」という感覚よりも、「物語に触れている」という感覚に近い設計が印象的でした。




また、リスニング体験の形式も一つではなく、複数ありました。


ヘッドホンを使って集中して聴くスペースもあれば、ボックス型のリスニングブースでは、上部のスピーカーから音声が流れ始め、まるでその場に人が存在して実際に語りかけているような没入感が生まれていました。




音が前方からだけでなく、空間全体から立ち上がるように感じられることで、単なる“再生された音”ではなく、“そこにある会話”として体験されるのが新鮮でした。


さらに、音響面ではDolby Atmosのような立体音響や、SONYのスピーカー・ヘッドホンといった高品質なオーディオデバイスが活用されており、「音で聞くこと」そのものに対して強いこだわりが感じられました。


また、空間全体にはラウンジエリアも設けられており、バーカウンターをイメージとして作られた場所やカフェがあり、訪れた人が滞在しながら音や会話を楽しめる構成になっていました。


特に、バーカウンターではお酒のボトルの代わりに壁に透明ブロックのオブジェが並んでいて、バーテンダーとライブラリアンを掛け合わせたようなコンセプトのスタッフが常駐していました。


その方が、バーカウンターに訪れた人に合わせて本を選んでくれるというサービスも行われており、その発想自体がこの空間らしさを象徴しているように感じました。


ニューヨークのカルチャーらしいオープンな空気感と、Audibleの知的な世界観が自然に共存している点も特徴的でした。


“読む”という行為を「音へと再構築する」ことで、情報の受け取り方そのものを再定義している空間だったように感じます。

日常の中であえて音だけに集中する時間をつくることの豊かさを、改めて体験できる場所でした。


次回のField Noteもお楽しみに!

 

4/23/2026

Filed Note#6 reSOUND New York

今回のField Noteでは、没入型の体験ができるエキシビション「reSOUND New York」に行ってきました!

2025年10月にオープンした今注目の没入型空間を体験してきました。


まず、reSOUND New Yorkはロックフェラーセンター地下のHEROで開催されているエキシビションです。光、音、触覚、そして空間演出を組み合わせて構成されており、

鑑賞するというより、”体験する”展示といった印象でした。


reSOUNDは、ソウル発のメディアアートスタジオd’strictによってディレクションされています。近年では、WAVE(江南の巨大波)やWaterfallで有名な没入型アートのトップランナー的存在として、世界で活躍している会社です。

もともとreSOUNDは2024年にソウルで初開催され、2025年にグローバルツアーとしてNYで展開されています。


展示は以下の各ステージで構成されており、単なる映像展示ではなく、空間そのものが作品になっているのがポイントです。

  • OCEAN

  • TRANSITO

  • BOUNDLESS

  • ECHO

  • FLOW


では各ステージ空間の中を少し紹介します!


ロックフェラーセンター下のHEROで開催中



OCEAN

中に入ると、壁全面にパノラマ映像が広がっていました。暗い波と音が空間を包み込み、これから始まる体験の導入として印象的なステージです。なお、この空間はどなたでも入場可能とのことでした。






TRANSITO

光による演出で、無数の光の柱が変化しながら空間を形成していました。繊細な音とともに、どこまでも続いていくような感覚になるのも面白いポイント。


BOUNDLESS

ここでは音を身体で体感できる空間が広がっていました。一面に毛のような素材で覆われた壁は、触れると音が出る仕組みになっていて、触れる場所によって音が変化します。複数人で触れると、まるで楽器のように音を奏でているような体験が楽しめました。



さらに進むと、ベンチと天井から吊るされたヘッドフォンが設置されており、それを装着して座ると。。。なんとヘッドフォンから流れる音が椅子から振動として伝わってくる!まるで音を”身体で感じている”ような不思議な感覚でした。





さらに奥には、鏡に囲まれた空間が広がっており、苔のような柔らかいフォルムのオブジェが展示されていました。どこまでも続いていくようなその空間の中で、苔の柔らかさとともに、自分と空間の境界が少しずつ溶けていくような感覚になりました。


触って体感


ECHO

この空間では、ブラックホールのデータを音に変換したサウンドが8方向から流れる構成になっていて、光と音に包まれるような体験ができました。MITの天体物理学者とのコラボで製作されていて、エネルギーの動きや、空間や時間がゆがむ感覚を体感できるのが印象的でした。これは実際に訪れて体感していただきたい空間です!


次の空間へ進む途中には、ラウンジスペースが設けられていました。ここでは、韓国のアーティストの作品やブルックリンを拠点とするアーティストの家具が並び、ローカルと韓国の要素がミックスされた空間が広がっていました。

バーカウンターやフォトブースが設置されており、イベント開催時にはドリンクが提供される場所として使われるようです。





FLOW

正面の壁と天井にLED映像が広がる空間で、床にはクッションが設置されており、寝転びながら自由に映像を楽しむことができます。

映像は美術史の要素を身体表現として再解釈しており、ダンスやリズム、音とともに空間が変化していきます。立体的な音響とLEDの空間演出によって、まさに没入感を味わえるステージでした!







私が印象に残ったのは、FLOWです。まさに”没入型”という言葉がぴったりで、作品の中に自分が入り込んだような感覚を強く感じました。

reSOUNDは、ただ見るだけの展示ではなく、自分自身が空間の一部になるような体験ができる場所でした。ニューヨークの中心にいながら、少し現実から離れた感覚を味わえるのも魅力的です。

現時点で、2026年10月31日までの開催が予定されています。気になる方は、ぜひこの没入感を体験しに行ってみてください!


次回もお楽しみに!




3/31/2026

Field Note #5 : NYC Affordable Art Fair 2026


今回のField Noteでは、NYCのチェルシー地区で開催された「Affordable Art Fair NYC Spring 2026」に行ってきました。今回は、ファッションのフィールドで働く私たちの視点から、このエネルギッシュなイベントの様子をレポートします。

 


今回の会場は、ウエストチェルシーの象徴的な建築物スタレット・リーハイ・ビルディング(Starrett-Lehigh Building)。実はここ、Ralph LaurenTommy Hilfigerといった世界的ブランドが過去にヘッドクォーターを置いていた建物で、ニューヨーク・ファッション・ウィーク(NYFW)の公式会場にもなる、NYファッションにおける重要ポイントなんです。巨大な貨物エレベーターがそのままオフィスやスタジオに繋がるこのビルは、かつての物流拠点としての無骨さと、現代の洗練されたクリエイティビティが同居するユニークな空間。そんな場所で、100ドルから12,000ドルという「手の届く」価格のアートが数千点も並ぶのが今回のイベント。アートをより身近に、そして民主的に楽しもうというNYCらしい自由な空気感に包まれていました。

(Image borrowed from Wikipedia)

 

会場を歩いていて特に足を止めたのが、Fremin Galleryのブースです。Fremin Gallery は、2007年にEmmanuel Fremin(エマニュエル・フレミン)によって創設されたNYのギャラリー。創設者のエマニュエルはもともと世界的に活躍したトップモデルという異色の経歴で、モデル時代に培った鋭い視覚的感性を活かし、現在では世界中の新進気鋭から中堅のアーティストを代表するギャラリーへと成長しています。

 

このギャラリーの作品の中でも、ベルギー出身のアーティスト、Didier Engels(ディディエ・エンゲルス)による「Ruby Pulse」が、特に私たちの興味を惹きました。この作品は、世界中の港で見かける巨大な輸送コンテナを撮影し、それらをコラージュして構成されたもの。整然と積み上げられたコンテナの色彩と幾何学的なパターンが、まるで脈動(Pulse)するかのようなリズムを生み出しています。物流用コンテナという極めて無機質な対象を、美しく、グラフィカルなアートへと昇華させる視点には驚かされました。特に日々ロジスティクスに携わる私たちにとって、この作品が切り取った物流の美は、日々の仕事をより魅力的にするような、そんなパワーを感じました。



 

ポップで遊び心溢れる作品で注目を集めていたのが、Dan Life(ダン・ライフ)。彼の「Crystals and clay on existing magazine cover」シリーズは、まさに今の時代を象徴するようなアイコン的な魅力がありました。既存のファッション誌やカルチャー誌の表紙をベースに、シンプソンズや草間弥生、オードリーヘップバーンなどの様々なカルチャーを代表するイメージがクリスタルや粘土を用いて立体的にデコレーションされた作品は、ラグジュアリーとストリート、ポップカルチャー、そしてノスタルジーが絶妙にミックスされています。雑誌という平面のメディアを、「一点物の宝物」へと変貌させるアイデアが光ります。


 

現在のNYCのシーンでは、アートとファッションがますます密接に隣り合っています。単に「飾るもの」ではなく、ライフスタイルや自己表現の一部として捉えられてきているアート。ファッションでも同じことが言え、特に、Didier Engelsの作品に見られるような「インダストリアルな美」や、Dan Lifeの作品に見られる「ポップな装飾性」は、ファッションデザインにおいても重要なキーワードです。機能性と装飾性、日常と非日常、そしてアートとファッション。これらの一見して相反する要素が交差するイベント「Affordable Art Fair」は、アート初心者からコレクターまで、誰もが自分の「好き」を直感で見つけられる素晴らしい場所でした。私たちも、ここで得た色彩感覚や自由な発想を活かしていきたいと思います。


  

 

Affordable Art Fairは全米各地のほか、イギリス、ベルギー、シドニー、香港など、様々な国と地域で開催しています。

皆さんも次の機会に、ぜひ自分だけのAffordableなアートを探しに足を運んでみてください!




2/20/2026

Field Note #4 Private Showroom MAN/WOMAN & Shoppe Object

 Field Note #4 Private Showroom MAN/WOMAN & Shoppe Object


今回のField Noteでは、ニューヨークで開催された MAN/WOMAN ShowとShoppe Object に行ってきました!


ファッションやライフスタイルに関わる仕事をしていると、NYFW期間中はランウェイだけではなく、展示会も大切なインプットの場になります。


今回は、それぞれ異なる特徴を持つ2つのショールームを訪問したので、その雰囲気や印象をレポートします。


MAN/WOMAN Show


まず訪れたのは、メンズ・ウィメンズのセレクトショップ向けにキュレーションされたブランドが集まるMAN/WOMAN Show。



いわゆる大量のブースが並ぶトレードショーとは異なり、ブランドごとの明確な仕切りはなく、まるでセレクトショップのような空間づくりが印象的でした。

会場全体はとても洗練されていて、ブランドごとの世界観を自然に感じられるレイアウト。

見せ方にこだわっていることが伝わってきました。


出展ブランドは、アメリカをはじめヨーロッパ系のインディペンデントブランドが多く、素材やシルエット、ストーリー性を重視したコレクションが中心。


実際にデザイナーやブランド担当者と直接話す機会もあり、どのような背景でコレクションが作られているのかを聞けるのは展示会ならではの魅力ですよね!



会場に入ってみるとこんな感じ。







特に私が気になったブランドは、ノルウェ発のブランドLividです。このブランドは、シンプルで、クリーンなデニムやウェアを展開するブランドで、素材選びやカッティングへのこだわりが強く感じられました。

カラーものが多いわけではないけれど、控えめだけど質の高さが伝わるブランドという印象でした。



Shoppe Object


次に訪れたのはライフスタイル・ギフト・ホームグッズを中心とした展示会Shoppe Object。


MAN/WOMAN Showとは雰囲気ががらりと変わり、2フロアにわたる広い展示スペースで開催されており、会場に入った瞬間からカラフルで温かい空気が広がっていました。

雑貨やインテリア小物、テーブルウェア、ステーショナリーなど、日常に彩りと楽しさをプラスしてくれるアイテムが多く並んでいました。


イーストリバー沿いのPier 36で開催され、広々としたスペースで日のあたりを感じながら、見て回りました。この週は極寒で、イーストリバーが凍っているのを会場から見渡すことができました。


展示ブースはこんな感じ。





色鮮やかなアイテムが並び、ブランドらしさが存分に表現されていました。

Showcase JAPANのエリアでは、日本の職人技やライフスタイルプロダクトを展開していました。





大規模ブランドというよりも小規模で個性のあるブランドが多く、バイヤー視点でも発見が多い展示会。

ライフスタイル提案を意識したプロダクトが多く、ファッションとはまた違ったマーケットの面白さを感じることができました。


特に印象に残ったのは、日本のステーショナリーブランドHIGHTIDE(ハイタイド)。シンプルで、くすっと笑ってしまうようなアイデアの詰まったデザイン性のあるプロダクトが並び、日本ならではの細やかさや実用性を感じました。



ランウェイとは違い、実際にプロダクトに触れたり、ブランドのストーリーを直接聞ける展示会は、自分の視野を広げてくれる大切なインプットの場だと改めて感じました。

ニューヨークに住んでいるからこそ、こうした展示会に参加できるのはとても貴重な経験だなと思います。


来月のField Noteもお楽しみに!