ニューヨークの地下鉄は、観光客から地元の人までが24時間利用する街でいちばん大事な交通手段です。そして、MTAは、路線数27、駅数472駅の世界最大規模の地下鉄。
世界で唯一、24時間運行している地下鉄でもあります。
でも今回の主役は乗客じゃない、駅の物資なんです!!!
そう、あの Canal Stや Times Sq 42 Stの標識。
地下鉄の椅子やランプ
実は買えるって知ってましたか?
え、あのちょっとボロボロのやつ?と思った人、正解です。
傷もサビもそのまま、リアルNYの味として販売されています。
そんな一風変わったイベントが、10月16日と17日にブルックリンで開催された
New York City Transit’s Memorabilia and Collectibles Pop-Up Shop。
私たちは、第二回目の Field Note 企画としてこのイベントを訪れることにしました。
このポップアップショップは2021年から始まり、
会場には退役した地下鉄の座席、吊り革、本物の駅看板まで勢ぞろい。
つまり、ほんの少し前まであなたの通勤を支えていたモノたちが、
今度はあなたの部屋を飾る番というわけです。
駅名サインを壁にかけるもよし、椅子を置くのもよし、
ニューヨークの空気をインテリアに取り入れるいちばんローカルで粋な方法かもしれない。
Court Square Stationの看板はなんと$2500😭
面白いのは、このイベントがただの地下鉄ファン向けじゃないところです。
会場には、たくさんの人が訪れていて9時30分に到着した我々は1時間待ちでようやく中に入ることができたくらいの大盛況ぶり。
子供からお年寄りまで、トレインマニアだけではなくおしゃれな若者や家族連れ、犬の散歩ついでに来た人?などローカルの人が多い印象。
彼らにとって地下鉄のグッズは、日常を切り取ったアートピース。
そのうちなくなってしまうメトロカードのサインここで売られているものは、いわば都市の残骸(urban relics)。
でもその使い古された質感こそがニューヨークらしさであり、
傷やサビのある姿こそが、この街っぽい。
きれいじゃなくていい。
リアルな美しさがそこにある。
グラフィティやスケートカルチャー、古着のリメイク、DIYの精神.......
どれも、壊れたものを再構築して新しいかっこよさを生み出してきた。
このポップアップでサインを買うのも、
単なるコレクションじゃなくて、街の一部を自分の世界に持ち帰る感覚に近い。
ニューヨークでは、アートも日常も同じ景色の中にあります。
だからこそ、MTAの標識一枚にも、誰かの物語やカルチャーの匂いが宿る。
サブウェイをただの交通手段としてではなく、カルチャーの舞台として見つめ直すと、
この街のリアルな姿が、少し違って見えてきます。
1. 現在、ニューヨークの地下鉄の3分の1は、メイドインジャパン
実は、ニューヨーク地下鉄の車両のおよそ30%は川崎重工製の物なんです。
川崎重工は1982年からMTA向けの車両を製造しており、最新モデル「R211」シリーズも同社が担当。川崎重工業は無塗装オールステンレス車体を採用して落書きを落としやすくしました。皆さんは、日本の技術がニューヨークの交通を支えてるなんて知ってましたか?
2. アートが息づく駅構内
MTAは1985年からArts & Design Programという取り組みで、公共交通をただの移動手段ではなく、アートを感じる空間にという理念のもと、駅構内に400点以上のアート作品を駅に取り入れています。作品は駅ごとの地域性や歴史をテーマにし場所に合わせて制作され、素材もモザイク、ガラス、金属、セラミックなど多様。MoMAやブルックリン美術館にも展示されるようなアーティストたちの作品が、実は駅構内の壁画やモザイクとして存在しているんです。
たとえば、6番線 86 Street駅ではチェコ出身のアーティストPeter Sís(ピーター・シス)による巨大な目のモザイク『Happy City』が出迎えてくれます。
遠くから見ると、ただの青い目のように見えますが、近づいてみると興味深いディテールがいくつもあることに気づきます。
まず面白いのは、この目の外枠がニューヨークのスカイラインで形づくられている点です。 そして、青い瞳の中には、星や動物、方位磁石などが描かれており、正確な意味はわかりませんが、私にとってこの作品はよく見ることの大切さを思い出させてくれるものです。 物事は、ぱっと見ただけではわからない奥深さを秘めているのかもしれません。
その中から、特に印象に残った2つの作品を紹介します。
まず、下二つの目を引くカラフルなモザイク作品は私のお気に入りで、アメリカのアーティスト Nick Cave(ニック・ケイヴ) によるものです。
このモザイクシリーズ『Each One, Every One, Equal All』は、Nick Caveの代表作 Soundsuits をもとに制作されたもので、合計約4,600平方フィートにわたる巨大な常設アートになっています。。壁一面に広がる色鮮やかな人物像が、タイムズスクエアらしい活気と多様性を象徴しています。
もうひとつは、「42」と描かれたポップな壁画。これは、アメリカのポップアート界を代表するRoy Lichtenstein(ロイ・リキテンスタイン) の『Times Square Mural』という作品です。太い線と原色の組み合わせが特徴的で、まるで漫画のコマのようなデザインがポップで素敵です。
使われなくなった標識や椅子が、こうしてまた新しい形で人の手に渡っていく。
このポップアップは、ニューヨークという街が古いものを捨てずに、新しい意味を与える場所だということを思い出させてくれた。
そしてその地下鉄を支えるのは、日本の技術で作られた車両や、
世界中のアーティストが手がけたアートの数々。
ただの交通手段ではなく、文化や歴史、人々の想いが積み重なった場所です。
サビも傷も、この街の一部。それを愛せるのが、やっぱりニューヨークの面白さなんだと思います。